北海道は近年になって開拓を繰り返しながら耕作面積を広げてきた土地です。営農しながら大規模機械化を進めてきていたので、とりあえずトラクターを買って、とりあえず格納庫を仮に作っておいた、というケースもしばしばあります。本来であれば格納庫を建設するときに、農地を転用する許可を取得する必要があったはずですが、忙しさに追われて許可を未取得のまま建設し、そのまま今日まで来ているわけですね。
行政はその「転用されないままに建設されている建物」について知っているはずなので、転用許可を取得するように勧告してくれれば良かったのですが、それがされないままだったり、無視していたりすることもあります。本当は罰則規定もありますので、意図的だろうと制度の不知によるものだろうと、無許可転用を放置してはならないはずなのですが、そういうケースはしばしばあるのですね。
そして、月日が流れ代替わりが発生してから、後継者が別の農地を転用し、今度は農家住宅を建設しようとしたとします。その時にも当然農地転用許可を取得する必要がありますので、今度は後継者がちゃんと転用許可を申請すると、そこで詰まるわけです。
「昔の違反転用を正常な状態にしないと転用許可は出せない」
違反転用については、次のような厳しい処分があります。
*農地の違反転用に対する処分と罰則:
土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、第四条若しくは第五条の規定によつてした許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置(以下この条において「原状回復等の措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。(農地法51条)
3年以下の懲役又は300万円以下(法人は1億円以下)の罰金(農地法64,67条)
ただ、あまりに過酷な処分を下すよりは、現状を是正させた上で活用する方法を採った方が良い場合は、追認的許可もあります。どちらになるかは断言できませんが、始末書などを提出し、後から許可申請書を提出することで許可取得しての転用となるわけです。
もともと農地転用については、3条許可、4条許可、5条許可のどれであっても、測量・建設図面や申請書の作成だけでなく、計画書や同意書、意見書など添付書類も数多くあり、かなりの手間を要します。上記のような別件での事後的許可申請だけでなく、農振除外申請などが必要になることもありますし、そもそも土地改良区になっていて8年経過するまでは転用申請ができないケースもあります。申請を受け付けてもらう前の事前調査や事前協議が重要になる許認可申請と言えます。当然ながら、スケジュールも余裕を持って組まないといけないことになります。
コンプライアンスに厳しくなっている現代ですので、適正な許可取得はとても大事ですが、これを報酬を得て受任できるのは行政書士だけです。無資格コンサルなどにはご注意ください。
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