民法等が改正されます~嫡出推定・否認や再婚禁止期間について、大きく変わりました

契約書への署名

令和6年4月1日から、民法の嫡出推定制度などの見直しが行われ、これまでと大きく制度が変わりました。改正の骨子は以下のようになります。

① 懲戒権:これまで民法では、第822条で「親権者が子の監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」という規定を設けていました。この規定がややもすると体罰だったり過度なしつけにつながっているということで、今回の改正では削除されました。しつけはあくまで子どもの人格を尊重し、年齢や発達の程度に配慮して行うものとされ、体罰や子どもの発育に有害な言動は禁止されました。

② 嫡出推定:これまで民法には、「婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」という規定があり、離婚から300日以内に生まれた子は離婚前の夫の子と推定されることになっていました。これが、離婚直前に妊娠した場合に、出生の届出を行わない「無戸籍」の子どもが発生する原因になっているということで、再婚した場合は、離婚から300日以内に生まれた場合でも、現在の夫の子と推定されることになりました。

③ 再婚禁止期間の廃止:旧民法では、前の夫と現在の夫で、法律上推定される父親の重複可能性があることから、女性に限り100日間再婚が禁止されていました。②の嫡出推定の規定が変更されたことで、重複の可能性がなくなったことから、女性であっても再婚禁止期間を気にせず再婚できることになりました。

④ 嫡出否認:旧民法では、夫の子と推定された子は、夫だけが「自分の子どもではない」と否認できることになっていました。ただし、否認の訴えを提起できるのは出生を知ったときから1年以内ということで、夫も、子も母も納得いかない状況が生まれるという事態がありました。今回の改正では、夫だけでなく、子、母も嫡出否認の訴えを提起することができるようになりました。同時に、離婚してから間もなく再婚し、その直後に子どもが誕生した場合、その父親は再婚後の夫として推定されることに改正されたため、前夫はその推定についても否認の訴えを提起できることになりました。「再婚後に生まれたかもしれないが、それは自分の子である」という主張をできるということですね。

⑤ 認知無効の訴え:父になる者が、「その子は自分の子どもである」と認めるのが認知ですが、認知の事実が真実と違うと思う人も発生し得ることになります。その場合、利害関係があるというだけで子どもからすれば知らない人が認知を無効とする訴えを提起する可能性がずっとついて回ります。これは子どもにとっては不安定な立場になりかねないため、原則として認知無効の訴えを提起できるのは、子ども、認知した父及び母に限定し、期間も所定の時期から7年間に限定しました。ただし、子どもからは一定の条件を満たせば21歳に達するまで提起できます。

民法改正に関する法務省HP(外部リンク)

子どもにとって、父親が誰かというのは大きな問題ですので、このような改正になったということだろうと思います。また、法律の規定と反する事実がある場合、無戸籍者が発生する問題を解消する必要もあります。子どもの福祉という点についていえば、大きな改正になるだろうと思います。

第三者の提供精子を用いて生まれた子どもの親子関係についても、母や子から嫡出否認などが行われると親子関係を複雑化しかねないということで、規制がされています。

子どもは弱く、肉体的にも精神的にも未成熟です。その福祉を国や行政、社会、地域、そして当事者が十分に配慮してあげることは、少子化と相まって非常に重要な社会的問題です。婚姻することはもちろん、子どもを持つことも個人の自由です。その一方、望んだからと言って叶わないこともしばしばあります。ですが、選択的に子どもを持たない方であっても、結果的に持たないことになった方であっても、老後は子ども世代に支えられることになります。その意味では、子どもは全ての人にとって宝であり、大事に育んでいかなければならない存在です。

夫婦がうまくいかず、離婚することは当然ありうることです。ですが、離婚に際しては、養育費の支払いなどについてきちんと協議をし、離婚協議書を作成することが重要です。時々誤解されている方もいらっしゃいますが、養育費はお子さんの権利であって、子どもを引き取る側が自由に使えるわけではありません。親の都合で子どもの福祉を損なうことがないように、十分な配慮が必要です。

もちろん合意した養育費を支払わないなどというのは論外であり、それを防ぐためには強制執行認諾の規定を盛り込んだ公正証書を作成しておくのも有効です。これは費用がかかるため、DVなどで離婚に至る場合にはなかなか作成することが難しいので、養育費の支払いについてももう少し強制力のある法制度が望まれますね。

行政書士事務所では、離婚協議書に関しては、夫婦双方の合意ができている場合のみ作成をお手伝いできます。どちらかの代理として交渉したりすることはできません(弁護士業務になります)。お互いに話し合いを十分済ませて、書面に残しておきたい、という方はご相談ください。

離婚協議書についてはこちらから

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